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自分らしく◆逆境の中でも誇り高く

中日新聞朝刊 2006.07.21


 健康を害したり、破産したり、愛する人を失ったりした時に、人は何をよりどころに生きるのでしょうか。 メリル・ストリープ主演の「愛と哀しみの果て」(1985年、アメリカ)は、人の強さについて考えさせられる作品です。


 舞台は二十世紀初頭。資産家の独身女性カレンは、人生の夢をアフリカの大地に求め、狩猟好きの男爵と結婚して、ケニアにやってきました。


 男が威張っていた時代でした。カレンは白人のクラブに入ることも許されません。でも「女には無理だ」と言われるたびにカレンは闘志を燃やし、遊び好きの夫に代わってコーヒー農園の経営にがんばります。現地の黒人たちにも誠意を持って接し、冒険家のデニス(ロバート・レッドフォード)に恋心を抱いたりします。


 最初の悲劇は、梅毒の発症でした。それも夫からの感染です。故郷デンマークに戻って治療を受けたものの、子どもを産めない体になってしまいます。その苦悩を振り払うように、カレンは現地の子どもたちの教育に情熱を燃やします。


 やがて夫と破局。デニスとの熱い愛の日々が始まりますが、自由を愛するデニスは、カレンとの結婚を拒否します。さらに、コーヒー農園の火事で資産は灰になり、信頼していた友人も病死。そして、デニスも飛行機事故で世を去りました。


 何もかも失って故郷に戻ることになったカレンですが、現地民たちの土地を奪わないように、イギリスの総督にひざまずいて懇願します。そんな姿に、クラブの白人男性たちも敬意を込めて、別れの乾杯をします。信念を曲げずに誇り高く生きてきたカレンの姿が、男たちを変えました。


 財産、健康、愛などの喪失は、心の危機につながりますが、それに対処できる力は「自分らしく生きてきたかどうか」に大きく左右されます。男女同権でない時代に、自立を目指してひたむきに生きたカレンの姿を現代女性はどう感じられるでしょうか。

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