中日新聞朝刊 2006.06.30
血液のがん・白血病は、難病として知られています。造血細胞を含んだ骨髄を、ドナー(提供者)から患者さんに移植することが最も有効な治療法です。今回紹介する「マイ・ルーム」(1996年、アメリカ)は、わだかまりを抱えた親子、姉妹が、白血病をきっかけに心の扉を開いていく物語です。
夫と別れ、二人の子どもを抱えて生活に追われるリー(メリル・ストリープ)。長男のハンク(レオナルド・ディカプリオ)は、母親と心を通わせることができず、家に火を付けてしまいます。家庭崩壊寸前のリーに、長年絶縁状態だった姉のベッシー(ダイアン・キートン)から20年ぶりに電話がかかってきました。ベッシーは白血病で、親族からの骨髄移植が唯一の希望なのだと言います。
リーは家族を連れてフロリダの姉を訪ねます。かつて自分が捨てた故郷です。難病の身で、かいがいしく老親の世話をするベッシーの姿に、ハンクも次第に心を開き、ベッシーを救うために骨髄移植の検査を受けます。
しかし、家庭の和解はすんなりとは進みません。リーとベッシーが激しく感情をぶつけあったり、ハンクが両親の離婚の真相を知ってショックを受けたりと、さまざまなドラマが続きます。曲折の末、死を受け入れたベッシーを囲んで、家族は固いきずなを結んでいきます。
白血病の患者さんが骨髄移植を受けるには、HLA(ヒト白血球抗原)の型の合う人にドナーになってもらう必要があります。型が合う確率は、きょうだい間でも25%。非血縁者だと数百人から数万人に1人といわれます。生と死を分ける骨髄移植の陰には、本人や家族の歓喜、葛藤(かっとう)、失意などさまざまな思いがあります。
現在では、世界各国に骨髄バンクが設けられ、非血縁者間の骨髄移植が盛んに行われるようになり、患者さんたちに大きな福音をもたらしています。治療法の進歩とともに、放射能などの有害な環境の改善が重要なことは言うまでもありません。
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