知的障がいを描いた印象に残る作品。「アイアムサム」(二〇〇一年、米国)(スタバで働く7歳の知能しか持っていない中年男性サムがホームレスの女性が出産した娘ルーシーと幸せに暮らしていた)、「ギルバート・グレイプ」(一九九三年、米国)(アイオワの田舎町でレオナルド・ディカプリオ演ずる知的障がい者が煙突に登り、街中の注目を浴びる中、母親が断固立ち上がる)などがある。そもそもIQはEQとは平行しない。ヒューマニティとは知能指数ではなく愛情溢れる感性ではないか。そんな問いかけをする本作も先行作品の剽窃とも云える。しかし偉大なピカソも剽窃名人との説もある。 それは兎も角、物語はシンプル。チョコレート工場で働くクリシュナは、六歳程度の知能を持つ正直者で周囲の人々から愛されていた。娘をニラーと名づけたクリシュナは近隣の人々の助けを借りて、ニラーは聡明な五歳児に成長。ある日、町の有力者であるニラーの祖父がクリシュナ親子の存在を知り「子供のような親に子育ては任せられない」と訴える。親権を巡る法廷場面も、のるかそるかの緊張感を欠いているのがいかにも印度らしい。弁護士に人情の機微があるのも救いだ。果たしてクリシュナはニラーとの穏やかな毎日を取り戻すことができるのか。まったりとした時間と自然環境の中で描かれる本作は、ボリウッド映画の新装開店を示し心の琴線に触れる。