嫉妬◆相手も自分も焼き滅ぼす
人間関係の中で、もっとも扱いが難しい感情のひとつが「嫉妬」である。映画『アマデウス』(1984年・アメリカ)は、天才作曲家モーツァルトと宮廷音楽家サリエリの対比を通して、この感情の深層を描いた作品である。物語は、老いたサリエリの回想として語られ、自らの才能に限界を感じながらも神に祈り続けた彼が、なぜモーツァルトに対して憎悪と執着を抱くに至ったのかを明らかにしていく。下品で奔放でありながら、圧倒的な音楽的才能を持つモーツァルト。その才能を前に打ちのめされたサリエリは、やがて「神はなぜ彼に才能を与え、自分には与えなかったのか」という問いに囚われ、尊敬は憎悪へと変質していく。嫉妬は相手を傷つけるだけでなく、自らの精神をも静かに蝕んでいく。華麗な音楽とともに描かれるその心理劇は、人間の弱さと業の深さを鋭く照らし出す。
17 時間前
鉄人◆難病にも立ち向かった
スポーツ選手の偉大さは、記録だけでは測れない。映画『打撃王』は、ニューヨーク・ヤンキースの伝説的選手 ルー・ゲーリッグ の人生を描いた作品である。ベーブ・ルースとの強力打線で知られ、二千百三十試合連続出場という不滅の記録を打ち立てたゲーリッグは、努力家で誠実な人格者としても愛された。しかし、栄光の絶頂で彼を襲ったのが、後に「ルー・ゲーリッグ病」と呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)だった。身体が少しずつ動かなくなる過酷な難病に直面しながらも、彼は最後まで気品と誇りを失わなかった。引退式典で語った「私は世界で一番幸せな人間だと思っています」という言葉は、病苦の中でも感謝を忘れなかった彼の人間性を象徴している。映画には ベーブ・ルース 本人も出演しており、往年のメジャーリーグの空気も味わえる。病に敗れなかった精神こそが、ルー・ゲーリッグを永遠のスターにしたのである。
5月28日
















